創業を考える際に、従業員を雇用することを検討する企業も多いでしょう。しかし、「労務管理」に関する知識や法的な手続きについては見落としがちです。当事務所では、「労務に関する手続きや注意点が知りたい」「何を優先して整備すればよいかわからない」といったご相談を多くいただきます。
今回は、創業時に押さえておきたい労務管理の基本事項についてお伝えいたします。
最近、システム会社として企業を立ち上げたCさんから次のようなご相談がありました。

「スタートアップとして事業を始めましたが、初めて従業員を雇う予定です。労務管理や必要な手続きについて何も知らないので教えてください。」
Cさんのような創業者にとって、労務管理は事業を健全に成長させるための重要な要素です。当事務所では、労務に関する基礎知識と優先すべき手続きを整理して提案しました。
当事務所の提案
Cさんには、次の5つのステップで労務管理を進めることを提案しました。
1. 雇用契約書の作成
従業員を雇う際は、必ず雇用契約書を交わす必要があります。
雇用契約書に記載すべき内容
- 雇用形態(正社員、契約社員、パート・アルバイト)
- 試用期間の有無と期間
- 賃金(基本給、手当、支払い方法)
- 就業時間、休憩時間、残業の有無
- 休日・休暇(法定休日、有給休暇など)
注意事項
- 労働条件を明確にしないとトラブルの原因になります。
- 曖昧な表現を避け、具体的に記載しましょう。
2. 労働保険・社会保険の手続き
従業員を雇用した場合、以下の保険に加入する手続きが必要です。
- 労働保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 社会保険
- 健康保険
- 厚生年金保険
手続きの流れ
- 労働保険番号の取得(労働基準監督署または公共職業安定所にて)
- 社会保険の新規適用届を年金事務所に提出
- 加入後は給与から保険料を控除し、毎月納付
ポイント
- 手続きは従業員の初出勤日から14日以内に行う必要があります。
- 社労士や専門家に委託することでスムーズに進められます。
3. 就業規則の整備
従業員が10名以上になった場合、就業規則の作成と届出が法的に義務付けられています。ただし、少人数でも就業規則を整備しておくことで、トラブル防止に役立ちます。
就業規則に含める内容
- 労働時間、休憩時間、休日・休暇
- 賃金の支払い方法、昇給・賞与に関する規定
- 懲戒処分や解雇の基準
- ハラスメント防止の方針
ポイント
- 労働基準法に基づいた内容にする。
- 従業員に周知する義務があるため、配布または掲示を行う。
4. 給与計算と年末調整の準備
給与計算は従業員を雇用する上で避けて通れない業務です。正確な計算と税務処理を行うことで、従業員の信頼を得ることができます。
給与計算の基本
- 基本給に各種手当(交通費、残業代など)を加算。
- 社会保険料や所得税、住民税を控除。
- 残業代の計算は「時間外労働の割増率」を正確に適用。
年末調整
- 毎年12月に従業員の所得税額を再計算。
- 控除申請書(扶養控除、生命保険料控除など)を従業員から回収し、適切に処理。
5. ハラスメント対策と労働環境の整備
健全な労働環境を提供することは、企業の成長にとって不可欠です。創業時からハラスメント防止の方針を明確にしておきましょう。
具体的な対策
- ハラスメントの定義や対応策を明記した「ハラスメント防止規程」を作成。
- 従業員向けの研修を実施。
- 苦情窓口を設置し、相談しやすい環境を整備。
お客様の声
提案に基づいて、雇用契約書や就業規則を整備し、社会保険への加入手続きをスムーズに完了しました。その結果、従業員からの信頼を得て、安定した労務管理を実現されています。
「労務管理は難しいと思っていましたが、具体的なサポートのおかげで安心して従業員を迎え入れることができました!」