「iDeCoやNISAって利用したほうがいいですか?」
当事務所では、こうした投資や年金に関するご相談を多くいただいております。お客様ご自身で判断していただくことが前提ですが、私たちはわかりやすく制度を説明し、それぞれのメリット・デメリットをお伝えしながら意思決定をサポートしています。
今回は、特に「iDeCo(個人型確定拠出年金)」について、制度の内容と留意点を中心に解説します。また、従業員の方がiDeCoに加入する際の会社側の手続きについても触れます。
Bさんからからこんなご相談をいただきました。

「iDeCoはしたほうが良いでしょうか?仕組みがよくわかりません。従業員が加入したいと言っている場合、会社として何か手続きが必要ですか?」
このような疑問をお持ちの方は少なくありません。iDeCoは老後の資産形成を目的とした制度で、税制面のメリットがある反面、注意が必要な点もあります。
iDeCoとは?
iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことで、簡単に言えば「自分で積み立てる年金制度」です。以下は主な特徴です:
60歳まで引き出し不可: 老後資金として使うことが目的
加入対象: 自営業者、会社員、公務員、専業主婦(20歳以上60歳未満)
自分で掛金を積み立てる: 毎月一定額を積み立て、金融商品を選んで運用
iDeCoのメリット
- 税制上の優遇措置
- 掛金控除: 掛金の全額が所得控除の対象(所得税・住民税の軽減)
- 運用益非課税: 運用益が出ても課税されない
- 給付時の非課税枠: 一括受取時は「退職所得控除」、年金受取時は「公的年金等控除」を適用可能
- 老後の資産形成
- 自分で計画的に積み立てられるため、老後の生活費を補う手段として有効。
iDeCoのデメリット
- 元本割れのリスク
- 運用商品によっては、元本を下回る可能性があります。
- 資金の流動性が制限される
- 原則として60歳まで引き出せないため、突発的な資金需要には対応できません。
- 掛金限度額の制約
- 自営業者や会社員など、立場によって積立可能な金額に上限があります。
掛金限度額の詳細
| 区分 | 掛金限度額(月額) |
|---|---|
| 自営業者(第1号) | 68,000円 |
| 会社員(企業年金なし) | 23,000円 |
| 会社員(企業型DCのみ) | 20,000円(月額55,000円 – 企業型DC掛金額) |
| 会社員(DBのみ) | 12,000円(月額27,500円 – 企業型DC掛金額) |
| 専業主婦(第3号) | 23,000円 |
従業員がiDeCoに加入する場合の会社の手続き
従業員がiDeCoに加入する場合、勤務先には以下の手続きが求められます:
- 加入申出書への記入
- 登録番号や企業年金の加入状況を記載します。
- 現況届の提出
- 毎年、従業員の勤務状況を確認するための届出を行います。
- 退職時の対応
- 退職者が掛金の引落停止を希望する場合、該当書類を提出します。
これらの手続きは企業型年金に加入していなくても必要となりますのでご注意ください。
企業型確定拠出年金(DC)を検討する場合の注意点
企業型確定拠出年金を導入する場合、以下の点に注意が必要です:
- 退職金制度との整合性
- 従来の退職金規定が「給付型」だった場合、確定拠出型への変更は従業員にとって不利益となる可能性があります。
- 経費としての掛金
- 企業が拠出する掛金は経費として計上できますが、従業員の合意が必要です。
最後に
iDeCoやNISAは、資産形成の手段として有効な制度ですが、それぞれにメリットとデメリットがあります。加入の可否は、ご自身のライフプランや資産状況を踏まえた検討が必要です。また、従業員の福利厚生の一環としてiDeCoや企業型年金を取り入れる場合、事前に制度内容を十分に理解し、適切な手続きを行うことが重要です。